単元 雨水のゆくえと地面の様子
目標 水のしみ込み方は、土の粒の大きさによって違いがあることを理解することができる。
担当榎戸
観察・実験
【事象提示】
雨上がりの校庭で土や砂場に雨水がたまったり、しみこんでいく様子を観察したり、土や砂の手触りを確かめたりする。またタブレットで撮影し、撮った動画や写真を映像で見る。調べてみたいことや気づいたことをもとに問題づくりをする。
【問題】 「水のしみこみ方は、地面の種類によってちがいがあるのだろうか。」
【実験】 ※実験方法・しみこみ方の評価ポイントを児童に考えさせてもよい。
虫めがね、またはタブレットとマクロレンズを使い、土、砂、砂利の粒の大きさを調べる。(見た目や手触りでも確認)丸の中はマクロレンズを使って撮影した様子。
水のしみ込み方比較実験装置を3個用意し、それぞれに土、砂、砂利各100 mL量り、入れる。写真は各100 mL量った様子。
※特に土は隙間ができやすいので、机上で容器の底をトントンと叩いて、隙間を作らないようにするとよい。
【結論】
「水のしみこみ方は土の粒の大きさによってちがう。粒が大きいほど水がしみ込みやすい」
豆知識
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普段、砂場にシートがかかっている場合は、雨の日にシートの端をめくっておくと水がしみ込む様子を観察できる。
- ペットボトルの口にかぶせる物は、不織布が適当。粗いものだと土や砂が通り抜けてしまう。身近なものだとお茶パックが便利だが他の不織布でも実験は可能(しみ込む時間に多少の違いは出る)。
- 多くの教科書では土と砂の二つだが、より結果がわかりやすいように砂利も追加した。
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今回使用した土、砂、砂利の種類と購入先
砂利→南国中目(金魚などの水槽に入れる)、発売元:シンセー
砂→家庭園芸用土 川砂、製造元:刀川平和農園
土→園芸用土 黒土 製造元:あかぎ園芸
※土、砂、砂利は産地や粒径、処理方法によって結果がわかりにくい場合があるため、必ず事前に予備実験を行う。
※今回の実験では、下から水が落ちなくなる時間は、砂利はすぐ、砂は1, 2分、土は10分程度であった。 - 学校の土を使う場合は、砂が混じっていないかを確認する。また塊になっている場合はつぶすか取り除く。
- 学校の砂を使う場合は、土が多く混じっていないか確認する。混じっている場合は、濁りがなくなるまで洗う。
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今回の「浸み込む」は粒の大きさによって「水たまりがなくなる(水が装置の中を上から下に移動する)」速さが違うことに注目している。一方、児童の一部が「浸み込む」を「水を含む(保水力)」と考える可能性もある。議論が発散しすぎて結論がずれないよう注意する。
参考資料
土、砂、砂利の大きさは? 地質学会、地盤工学会等いくつかの基準が存在する。
例:産業技術総合研究所 地質調査総合センター
【絵で見る地球科学、「泥・砂・礫の区分」】。(地質学会の基準)
https://gbank.gsj.jp/geowords/picture/illust/mud_sand_gravel.html
【発展】砂・砂利より土を通った水のほうがきれいなのはなぜ?
土(粘土)は粒が小さいので、汚れを吸着して水をきれいにすることができる。専門的には、粒の大きさが小さいと表面積が大きく、コロイドの性質を示し、水の吸着保持・イオン交換・凝集性など土壌の理化学的性質に寄与する。
例:岩田ら (1998)土のコロイド現象の基礎と応用 農業土木学会誌 66 (1) 75-81
http://www.jsidre.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/05/66-1colloid-1.pdf
実験レポ
良い点 ・今年度から新出になった単元のため,実験道具等が揃っていなかったため,大変助かった。 ・東京書籍の教科書では,土と砂の違いのみの...もっと見る
HOさん 北海道 教職員今年度の新出単元なので,大変助かりました。
良い点 ・今年度から新出になった単元のため,実験道具等が揃っていなかったため,大変助かった。 ・東京書籍の教科書では,土と砂の違いのみの実験となっているが,砂利が含まれているため,より粒径の違いによる浸み込みの速さの違いを実感することができた。 ・教科書の実験セットより,より簡単に制作,活用ができる。また,乾燥させれば再利用できる点もよい。 ・マクロレンズとタブレットPCを活用することで,粒を拡大して見るだけでなく,写真に残すことで後々の比較を行うこともできる。 改善できそうな点 ・土や砂利などの個体を100ML計りとることはやや児童には難しい。多少の差を意識させないのであれば,児童に行わせてもよいが,しっかり揃えたいのであれば,教員が行った方がよい。 ・ペットボトルの形状や容量によっては,水を入れる際にあふれそうになることが考えられる。容器や水の量などに検討が必要。 ・ストップウォッチで滴下時間を計りとるのはやや困難。砂利は短く,土はとても長くなる。授業時数を考えると,順序を調べるだけでも十分ではないか。 児童の反応 ・実験に興味をもってできていた。 ・上にたまった水がなくなったらという視点が分かりやすいようで,実験結果が正確に把握できていた。 ・下にたまった水の量や色の違いも見ることができ,興味が深まった。ただし,本時の目的からずれるので留意は必要。 ・実験結果から何がわかるかという話し合いをする時間も十分に取れていた。
HOさん
北海道 教職員
本サイトで紹介しておられました、水のしみ込み方比較実験をやってみました。それぞれが持ち寄った土、砂、砂利など様々な粒径のサンプルを用いて10...もっと見る
MKさん 教職員水のしみ込み方比較実験
本サイトで紹介しておられました、水のしみ込み方比較実験をやってみました。それぞれが持ち寄った土、砂、砂利など様々な粒径のサンプルを用いて100 mlの水を加えてから、通り抜けてしまうまでの時間を測定しました。透明なペットボトルの上部に入れた土の層を水が通り抜けている様子がよく見えるので、粒径、土の質と水が通り抜けていく時間との関係についての観察と実験を生徒たちが経験できました。粒径が大きな石灰石の砂利は、それよりも粒径が小さな普通の砂利よりも通り抜ける時間が約10秒ほど長くかかったのはなぜだろうと皆で考えるきっかけができました。上部に何もいれずにボトルの口にガーゼをはっただけだと水の通り抜けにどれくらいの時間がかかるのだろうという疑問をもち、試みてみる生徒もいたりして楽しく学ぶ時間が持てました。
MKさん
教職員