日食の観察

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単元 (小学4年)月と星(小学6年)月と太陽(中学3年)太陽系と恒星

担当田中

実験環境学校、自宅

1.「日食」はどんな仕組みで起きるのでしょう。

  • 地球と月の距離は平均で約38万kmです。
  • 地球と太陽の距離はその約400倍の約1億5000万kmです。
  • 太陽の直径は、月の直径の約400倍です。
  • 従って、地球から見た太陽と月の大きさ(「視直径」といいます)はほとんど同じ(約0.5度)です。
  • 新月(正確には月齢0の瞬間)には、太陽―月―地球が、ほぼ一直線に並びますが、普通は完全に一直線には並びません。
  • それは、地球から見て月と太陽の見える角度が、ほんの少しずれていることが多いからです。
  • ところが、一年に一回か数年に一回、太陽―月―地球が完全に並びます。その時に「日食」が起きます。

 

2.「日食」と「月食」が起きる仕組みには、どんなちがいがあるのでしょう。

  • 「月食」は、太陽―地球―月の順で、完全に一直線に並んだ時に起きます。必ず「満月の日」の夜に起きます。
  • 「月食」は、地球の影に満月が入る(正確には地球の影が満月を追い越していく)現象で、満月が少しずつ欠けて見えます。
  • 「日食」は、太陽―月―地球の順で、完全に一直線に並んだ時に起きます。必ず「新月の日」の昼間に起きます。
  • 「日食」は地球の地表や海面を「月の影」が移動する現象で、太陽が新月の影で少しずつ欠けて見えます。

月食とお饅頭

月の形

※月食独特の月の形と、その形にかじったお饅頭のツーショット。非常に苦労して撮影しました。

参考:ウェザーニュース、「今夜、皆既月食チャンス!日食とは何が違うの?」2022年11月

3.「日食」と「月食」ではどちらが多く起きるでしょう。

  • 答えは「日食」です。「月食」は数年に一度しか起きませんが、「日食」はほとんど毎年起きています。
  • しかし「月食」は一度起きると、世界の半分ぐらいの地域で見られるのに対し、「日食」は非常に限られた地域でしか見られません。今回の「日食」も、メキシコ~アメリカ~カナダの一部の地域だけです。
  • 従って、ヒトが一生のうちに見るチャンスが多いのは「月食」で、「日食」(特に太陽が完全に欠けて見える「皆既月食」)は、一生のうちでもなかなか見られない現象なのです。

4.日食にはどんな種類があるのでしょう。

  • 「日食」には、「皆既日食(かいきにっしょく)」「金環日食(きんかんにっしょく)」「部分日食」の3種類があります。
  • 「皆既日食」は、「地球~月」の距離が近く、地球から見た太陽の大きさ(視直径)よりも、月の大きさ(視直径)のほうが大きい時に起きます。太陽は月によって完全に覆い隠されます。
  • 「金環日食」は、「地球~月」の距離が遠く、地球から見た太陽の大きさ(視直径)よりも、月の大きさ(視直径)のほうが小さい時に起きます。太陽は月によって完全に覆い隠されず、「リング状」に見えます。
  • 「部分日食」は、地球(正確には観測地)から見た太陽と月が少しずれていて、太陽の一部分だけが欠けて見える日食です。皆既日食の前に約1時間、皆既日食の後にも約1時間、部分日食が見られます。

参考:ウェザーニュース「皆既・金環・部分日食の違い 起こるしくみは?」2023年4月

5.宇宙から見た皆既日食のようす

  • 下の写真は、日食の影が、日本列島付近に最も近付いた時の、衛星写真(拡大カラー画像)です。
  • 北太平洋上に、月が作った黒い影が、くっきり映っているのがわかります。「世界最大の影」です。
  • 4月8日にも、このような影がメキシコ~アメリカ~カナダを横断します。

「2016年3月9日の皆既日食の衛星写真」2016_0309 11h 00’JST

  • 日食中は、昼でも夕方のように薄暗くなります。(2012年5月の東京の金環日食)

  • 鳴いていた小鳥が鳴きやんだり、赤ちゃんが泣きだすこともあります。
  • 気温が少し下がることもあるので、気温の変化を測ってみると面白いと思います。

  • 火星でも日食は起きます。
  • ただし、「火星の月(衛星)フォボス」は、小さくていびつな形なので、こんな変な日食になるのだそうです。

Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS/SSI
NASA, Perseverance Rover Sees Solar Eclipse on Mars, 2022.4

7.アメリカ各地での日食の見え方(2024年4月8日)

  • アメリカ各地によって、見え方が大きくちがいます。
  • 自分の住んでいる(または日食を観測する)場所で、どんなふうに見えるのか、イメージしておきましょう。

スターゲイズ社WEBページ、「2024年4月8日 北アメリカ大陸横断皆既日食」

  • まず、中部時間13:20頃、メキシコで「皆既日食」になります。そのころシカゴの近くでも、すでに「部分日食」が始まっています。
  • 中部時間13:40頃、テキサス州のダラスで皆既日食になります。その頃、シカゴの近くではかなり欠けて見えます。
  • 中部時間14:05頃、インディアナポリスで皆既日食になります。シカゴ市内では、三日月形の非常に細い太陽が見られます。
  • 中部時間14:15頃、クリーブランドで皆既日食になります。シカゴの近くでは、ほとんど三日月と同じような形に見えます。
  • 中部時間14:30頃、カナダのモントリオールで皆既日食になります。シカゴの近くでは、少しずつ太陽が元の形にもどり始めています。

8.日食を安全に観察するために

  • たとえ欠けていても、太陽(「光球」といいます)を直接目で見ることはしてはいけません。
  • たとえ一瞬でも「網膜火傷(もうまくかしょう)」になり、目の奥にダメージがおよびます。
  • 特に望遠鏡や双眼鏡で太陽を見ると、一瞬で「失明」します。
  • 目で観察する場合は、専用の「遮光板(しゃこうばん)」か「日食グラス」が必要です。
  • 「濃い色の下敷き」「煤(すす)で黒くしたガラス板」「安物の日食グラス」などは、絶対にNGです。
  • 「遮光板」や「日食グラス」を使う場合も、長時間連続して使ってはいけません。
  • 時々目を休ませて、光線や熱から目を守りましょう。
  • 「遮光板」で部分日食を見ると、こんなふうに緑色に見えます。これは「安全な色の太陽」です。

  • ワンちゃんも日食の観察には「日食グラス」が必要ですワン!

9.「ピンホール」を使った日食の観察方法

  • 「遮光板」や「日食グラス」が入手できない場合は、おもしろい日食の観察方法もあります。
  • 晴れた日に太陽の光を小さな穴(ピンホール)に通すと、地面や壁に「丸い太陽」が映ります。
  • 部分日食中にそれを試すと、地面や壁に「その時の日食の形」が映っておもしろいです!
  • ピンホールは、自分で紙に穴を開けて作っても良いですが、いろいろなもので代用できます。
  • これは自作の「ピンホール日食観察板」です。穴の直径は、1mmぐらいが良いです。
  • 部分日食中に壁や紙に映すと、太陽の形がこんなふうになって面白いです。
  • 切手の穴(目打ち)を使ってもできます。これはかなりお手軽な方法ですね。

  • クラッカーの穴でもできました。ほかにもいろんな「小さな穴」を探してみましょう。

※クリームがはさまっているクラッカーはNGです。
※その場合は食べちゃってください。

  • 何と、セーターの生地をのばしてもできます。
  • 日食が何千個も「大量生産」できました。ほかにも「麦わら帽子」「ガーゼ」「ザル」でもできますよ。

※「ザル」は使えますが「サル」は使えません。

  • 木の葉っぱの間からもれる「こもれ日」も、日食の形になって面白いです。

10.鏡を使って日食の観察をしてみましょう

  • 小さな鏡(デンタル・ミラー)と厚紙を使うと、日食の太陽の形を映せます。
  • 大きな鏡を使うと、となりの建物の壁にも映せます。
  • 鏡の形は四角でも円でも関係なく、日食中の太陽の形になります。
  • 日かげにある壁のほうが、見やすく映りますよ。

  • 最後に「日食かつ丼」も作ってみましょう!

 

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